無題/hon
 
町で話すのとはまるで違う顔と声で、彼は言った。


ある晩、川べりを歩いていると、ぱしゃぱしゃと水のはねる音がして、見ると川に入って女が水浴しているところだった。
白い肌が透明に流れる水の膜を纏って、艶やかにその夜の月の光に照らされていた。それは美しい女の肉体だった。俺は出て行って女を暗い茂みに引っ張り込むと、そこで犯した。
女ははじめ抵抗したが、すぐにおとなしくなった。俺にとってそういうことの最初の経験であった。


次の日、山の家畜小屋から戻る途中、洞窟の方から武装した五人の兵士がこちらへ近づいてきた。
そいつらが俺の行く手を遮るので、なんだと言ってやったら、昨夜、王の許婚に
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