腐りゆく季節/山本 聖
 

驟雨と不可視的な大気からの氷の噴霧によって
夏の果物たちはいっせいに腐りゆく

森の中
まだ碧々とした葉のはざまに立てば
濃厚なる芳香
甘酸っぱくそして酔いをひき起こす淫靡な匂い
ブラックベリー、ブルーベリー、林檎に桜桃
それらの麗しい顔の上にみっしりと蔓延る青白いカビの化粧

少しでも触れれば
果物の陰に潜んでいた貴腐の精たちがぱっと舞い上がる
ウスバカゲロウにも似た羽を持つおんなの顔をした貴腐たちは
彼女らの毒を果物へと注入し
そして飛び立ってゆく
そうして果物はカビの化粧を施され腐ってゆくのだ

滴る甘き美酒
それは夏の終
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