腐りゆく季節/山本 聖
 
の終わりを告げる涙のひとしずくか

じきに
匂いをかぎつけたカタツムリたちが
厳かに礼拝をするかのように列を成して
何十匹何百匹と
腐りゆく果物に這い上がってくる
何を間違えたか生きているわたしにも彼らは這い上がり
強い香りを放つこの腐敗物を吸い尽くすのだ

どうやらわたしも腐りゆくようだ
貴腐の精はわたしにも毒を注入したのだろう
美酒として食い尽くされ、吸い上げられるのも悪くない

森の中
腐りゆく果物とわたし
冷たい葉陰に静かに横たわっていると
ふわふわと微小の胞子が鼻の穴からわたしの中に浸入する

ふと、眼球をその軟体動物に食われる直前
木々の間から覗いた夕刻の空に
やはり腐った肉色をした月がわたしを眺めおろしているのを見た

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