帰れない夜/快晴
真夏の熱にうかされた人々が
都会のビル群の合間を闊歩する
私はひと時の避暑地を求めて
まるで逃げるように彷徨い歩く一匹の蟻
日が暮れても
太陽に照らされ続けたアスファルトは
ギラリと蜃気楼のように熱を放ち
私は人混みに紛れて電車を乗り継ぐと
かつて通い慣れた懐かしい街で降りる
10年前の真夏の夜に家を飛び出した時
私は小銭をポケットに詰めると靴さえも履かずに
246号線沿いを自転車でガムシャラに走った
行き先など何処にも無いことを知りつつ
ただ取り囲む全てから逃げ切るために
深夜の246号線はトラックが連なって走り
その排出するガ
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