かげろうと檜の木笠/モーヌ。
 


くたびれて 夕影と けはいが 告げられ

はたせなかった まぼろし

旅人と 呼ばれたく そして 失格を して ゆく





つづらおりを きびすを かえして 下り

花矢倉 という名の みやびやかな 坂道を

ふたたび

佐藤四郎兵衛の 鏑(かぶら)の おとが して

お別れを 告げる 唱声も する

梓弓に とめられし なき名を かがやかす

ミルクの ひかりが 枝々の うえを 追って

まるっきり ひとに であわなかった

遠雷する 死者たちの ほのかな 風韻や

ぼくを 呼んで いる 蝉しぐれ ばかり

“ 食べて 
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