かげろうと檜の木笠/モーヌ。
て ゆかれませんか? ”
すずやかに ひとりっきりの 旅人に かたらう 声
暑気に みがかれた 決然と した 凛冽
衰亡のなか 夏の 気高き 響きに であって
ふと 見やった 茶店の 看板には
静御前の しずかと 書かれて あった
午後の いろに 立ち 誘われて
八月の 日脚の 長き光線の 差す
テラスで 柿の葉ずしを 食べた
びんぼうの 旅は 空腹で
そえられた つめたい 麦茶も うまかった
かげろうの 道中
笠の ふちや 杖の さきに 見えて いた
若者や ひとも だれも 見えなく なった
しずや しず しずの 苧環(おだまき) くりかえし
ぼくも すきとおった 道の 枝折りに なって ゆき
また 夏が くりかえされれば
旅も また つづけて どこからか はじめられる
また...
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