夏の日の幻想達 十一/soft_machine
行灯の傍らに熟女がいて爪を研ぐ
いつもの散歩道に忽然と顕われた時代劇さながらの風景
悪くないよな
完璧な静寂の為に純雪で布を織る
胸を決めつけられるほどの白い情
*
正午を告げる鐘の音が
汚れた風に運ばれてきた
台風が過ぎて次の日の晴れは
人の群れが立てるかわいた音が
蜃気楼を遠ざけて過ぎる
*
水道電気電話料金の請求書の束に
一通の封筒が紛れてあった
今日もまたさびしそうに
この時でなければ
けして見ることのない薄みで
蛍光灯に照らされた机の陰りに手を触れながら
思い出すものもある
お前がかすかに空を窪ませる匂
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