夏の日の幻想達 十一/soft_machine
 

葉の陰が首筋を掠めてゆく
誰も知らない
この霞んだ晴れが
いつ雨に変わるのか
コンクリートの連なりに生きる限り
それを誰かが造り出した理由を
実のところ私も知らない
ただ、あの日の屋上に出る鍵が虹と一緒に壊されていることに
気づいた覚悟はできていた
竹篭に収まる昆虫に囁きかけて
泣いて深く沈めた
孤独な睡群

  *

 悪くない

 欠けたワイングラスのような椅子の座り心地に
 それでも笑顔でいながら反吐が胃に収まっているんだ
 消化しきれないでいる焼き鳥や枝豆や冷奴
 しかしそれらも今また溶解の途中

 松明を点けた男
 この真夏の都で

 
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