夏の日の幻想達 十一/soft_machine
 

雨はずっと太古のままの姿で

  *

羽目板にサドルのない自転車を預け
一日中遊んでもそれは佇んだまま
いつか突然消えさる
誰に盗まれたのだろうか
いや‥‥すれ違ったのだろう
背中に甦る
きのうのぼくがふと手を引かれ
もう片方の手でぬいぐるみを不器用に引きずるのが見れる

夏の終わりにあっけらかんとして空は晴れ
うっすらと苔に覆われふさふさの匂い
枯れ果てた細胞の列に影を落とす
その奥に置かれた声に導かれ
還ったのだろうか
誰にも知られない
ことばが刻み朔し孕めば
埋没した熱が暗室で露にされネガのように反転する時

  *

男の子が雨を避け
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