批評について、ふたたび/岡部淳太郎
いうのは、作者と作品を成長させるのには役立つかもしれないが、初めから作者や作品と一緒に高め合っていくことを拒否したような立ち位置なので、批評者自身の成長は望めないのではないかと思われる。つまり、良い批評者というのは、高みから作品を見下ろすのではなく、作者と同じ土俵に立って作者と同じように作品について思いをめぐらす者であるのだ。
また、作品だけに限ったことではなく、あらゆるものは批評されることから逃れられない。私たちが日々生きているこの世界そのものが、作品空間であると同時に批評空間でもあるのだ。たとえば人物批評という言葉があるように、社会の中に生きている限り他者からの批評的な視線にさらされること
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