批評について、ふたたび/岡部淳太郎
 
そしてもうひとつ、批評する側から見て大事なことがある。批評文を書きながら留意した方がいいものとして、批評の作品化ということが挙げられる。批評とは単に人の作品について勝手に言葉を並べて満足するだけのものではない。批評も作品になりうる。それは、批評行為であると同時に作品行為にもなりうるのだ。そして、批評をすることによって、当該ジャンルや自分自身のものの考え方について自己確認し深化させるきっかけを得ることも出来る。批評自体にそのような機能が備わっていなければ、世の中にあまたいる自らは詩や小説を書かずに評論だけを書いている、いわゆる文芸評論家という人たちの存在を説明することが出来ないだろう。
 批評への
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