信念の塔/悠詩
ちは
神に謁(まみ)える塔を建てはじめた
石の塔
木の塔
雪の塔
針の塔
粘土の塔
意志
気
勇気
信
念
自らの道を螺旋階段に託し
作っては壊し
登っては落ち
賢者と呼ばれていたぼくの兄は
みんなの試みと過ちをただし
じっと物思いに耽っていたけど
突然井戸の下の樹海にこもり
季節が一巡りする頃
ひとつの塔を建てはじめた
「兄さんも天の宝が欲しいの?」
「宝を得るためではない
自身の塔を造ることに意義がある」
石の基礎
木の柱に
雪の装飾
針のか
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