樹海/円谷一
 
ばあさんはとても喜んでくれた 食事が終わってさて出発しようかとする時におばあさんは白米の握り飯とたくあんを渡してくれた 何処へ行くのか分からないけれど気を付けて行くんだよ と心配してくれて言ってくれた 大丈夫です 危ないところへは行かないですからと笑って返した 本当は命を粗末にするような場所へ行くのだ そしてもう外の世界へ引き返さないかもしれないのだ 遠くから手を振るおばあさんに手を振り返して歩いていった


森は不気味な程静かで無数の口を大きく開けていた 廃車が一台ボンネットの口を大きく開けていて その中に蜂の巣を作っていた 蜂が花も無いのにブンブン飛び回っている 五月蠅いからはたき落とし
[次のページ]
戻る   Point(2)