無人駅/悠詩
んて
わたしは痛みを確かめるため
何度も何度もボタンを押した
ちぎっては捨てる夢が
無責任に溢れていった
薄っぺらいアイデンティティに身を委ね
強くなれますようにと祈りながら
不文律の階段をのぼる
覚束ない足跡は
届かぬうつつへの逓送曲(フーガ)にお誂え向き
とまどい風に揺られる引換券
薄くて弱くて
わたしの血を捺印しても
やっぱりすぐに破れてしまうんだろうな
行き先不明の証明書
はじめからお金のいる切符を買うより
乗車券引換券発券機のボタンを
押すほうが勇気がいるなんて
カラのアイデンティティを握り
世界の亀裂をたゆたう
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