気をつけて/砂木
 
までは ゆっくりと間に合う
三月の風は冷たいけど心地良かった
バス停まで歩きかけた時 ふいに
男が前に立った

いくらだ
と 言う

いくら?
聞き返すと

やってるんだろう
と 声をあらげた

なにを? と

聞き返そうとした私と男の間に
さっと くみちゃんは立った
私の手首を掴んですぐ走った
男が叫んでる

いくらっていくらって
わたしのねだん?

そんな女にみえたって事?

走って 段々歩いて寮に帰り着いて
くみちゃんと別れて 部屋に戻って
せっかくの送別会だったのに
知らない男に受けた屈辱に怒り狂っていた

故郷へ帰る時 くみち
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