もりおかだいち「蜘蛛の内部にて」について/葉leaf
常人のそれに比べてはるかに広く豊かで、様々な遠い地点とも美しくねじれた経路により接続されている。テーマの設定により詩行の潜在する領域はある程度制限されるが、詩人の連想力や認識力・表現力は、そのような制限をはねかえすように働き、詩行の潜在する領域を拡大しているのである。
それゆえ、この作品では、「音楽」「黙考」「独裁」「前衛」「博愛」といった、通常なら「蜘蛛の内部」とはあまり関係を持たないような語が使用されるのである。このことは、詩人の依拠する詩行の源泉が、常人に比べて豊かであることを物語っている。「蜘蛛の内部」について語るのだったら、常人はせいぜい生物学的で無機的な叙述をするのみであろう。
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