もりおかだいち「蜘蛛の内部にて」について/葉leaf
だ、静寂の質が異なってくる。
詩人が詩行をつかみ取ろうと模索しているとき、その模索は意識下で行われる。それゆえ、詩人は模索の最中に、模索の対象を知覚するということはない。模索の対象は、模索が成功したときに初めて意識上に現れるのである。それまでは、即ち模索の最中は、意識には模索に関する何物も現れない。その意味で、詩行の潜在する領域は静寂に支配されるのである。
ただし、この静寂は意識上のものにすぎず、意識下では、精神が、詩行の発端をつかみとろうとせわしなく模索の運動をしている。だから、詩行の潜在する領域を支配する静寂は意識上の仮象にすぎず、意識下では精神が騒がしく運動しているのである。
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