牛の魔法使い/楠木理沙
ーを引っ張ると
そのまま母に手渡した
母は怪訝そうな顔つきで こんなのがほしいのと小さく笑った
サイズを見なくて買ったTシャツは ワンサイズ大きくてとても後悔した
そのうち背が伸びるわよ
今まで何度聞いたかわからない 鏡越しに聞こえた母の声が
やたら恨めしく思えた
ぶかぶかのTシャツにスパッツをはいたわたしは
近所の公園で君を待ち続けた
遅刻してきた君は わたしの姿に驚くと恥ずかしそうに駆け寄ってきた
二頭の牛が 夕焼けに染まって真っ赤になっていた
結局 わたしはレイアップシュートを決めることは一度も出来なかった
君はダブルクラッチやフェイダウェイシュ
[次のページ]
戻る 編 削 Point(6)