牛の魔法使い/楠木理沙
シュートなんていう
絶対に真似できない技を見せてくれた
最後にいいものみせてやると言うと
ボールを片手に持って走り出し
高く飛び跳ねてそのままリングに叩き付けた
いつまでもリングは悲鳴を上げ
そこにぶら下がった君の影が どこまでも伸びていた
ダンクって言うんだぜ
すごい 知ってるよ それ知ってるよ
わたしの必死さに君は思わず噴き出して 低い笑い声が公園中に響いた
一本だけ点いた電灯の下を歩きながら
君はわたしのTシャツを引っ張り サイズはこれぐらいがいいんだぜと言った
そして これじゃあ兄弟みたいだなあと笑ったけれど
わたしは頷くことができなかった
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