置き去りカンバス/悠詩
醒めかけた陽炎の消えそうな世界にあるのは
天球のカンバスと
拳銃のカンバスと
命の大樹のみ
トネリコを見上げて描いたその手にあったのは
手に入れたつもりだったなにがしかの栄誉
夢や希望と引き換えた
長い道程への切符
まだここで引き換えてはならなかった切符
てのひらから
指折り数える時間の粒があふれ出す
指の間からぼろぼろ零れ落ちる速さは増し
掴み取るのが追いつかなくなる
零れ落ちていくのは
あまたのカンバスに描かれていた風景
縺れる足で必死に駆けて
大地に刻まれた足跡を辿る
消えてしまう前に
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