世界の終わりについて/大覚アキラ
 
 雨がぽつりぽつりと降り始めた。雨宿りできる場所などどこにもなく、冷たい雨に打たれながらぼくたちは歩いた。歩いても歩いても、鉄塔にはなかなか近づかなかった。春先には一面のレンゲ畑になるこの休耕田も、いまはただ広大な灰色の土地でしかなかった。とにかく灰色で、冷たくて、濡れていて、妹の濡れた髪からぼんやりと湯気が立ち上って、ぼくはそれを見て「世界の終わりみたいだ」と思った。

 すっかり暗くなった頃に、ぼくたちはようやく家に着いた。玄関先に出て不安げに辺りを見回している母の姿を見た途端、ぼくと妹の中で何かが弾けてしまって、泣きながら母に駆け寄ったのを覚えている。自転車は後で父が拾いに行ってくれて、
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