世界の終わりについて/大覚アキラ
 
て、無事に家に戻ってきた。ぼくはこっぴどく叱られるだろうと思っていたのだが、不思議と両親はぼくをたいして叱らず、行き先を告げずに遠方に行ったことと二人乗りをしたことについて軽く咎められた程度だった。


 ぼくにとってこの体験は、映画『スタンド・バイ・ミー』のような甘く切ない少年の日の思い出なんかではない。芥川龍之介の『トロッコ』のような人生の悲哀に重ね合わせるようなエピソードでもない。ただ、ぼくの中にある「世界の終わり」のイメージというのは、あの日ずぶ濡れになって見た灰色の一月の休耕田の光景そのものだ。それがどうした、といわれても、ただそれだけの話だ。
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