世界の終わりについて/大覚アキラ
ードを出していたぼくはあっけないほど簡単にハンドル操作を誤った。ガードレールも柵もない道端の側溝に、ぼくたちは自転車ごと転落したのだ。
側溝は、まさにドブ川といった様相で、子どもの腰ぐらいの深さの澱んだ水が流れていた。幸いにも、ぼくも妹も擦り傷程度で済んだのだが、泣きじゃくる妹をなだめるのにぼくは一苦労した。側溝はかなり深く大人の背丈ほどもあり、容易には這い上がれそうもなかったが、すぐそばにちょっとした鉄製のハシゴ状のものが据え付けてあり、そこからどうにか脱出できそうだった。しかし、子どもの力ではどう足掻いても自転車を抱え上げることはできず、やむなく自転車はそこに置き去りにすることにした。
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