世界の終わりについて/大覚アキラ
、真新しい自転車はまるで魔法のような速さでぼくたちを運んでくれたし、実際ぼくたちは随分遠くまで辿り着いたのだ。普段、家の窓から遠くに見える高い鉄塔のすぐそばを通り、大きな橋を越え、見たことのない制服を着た高校生たちが並ぶバス停を横目に見て、自転車はぼくたちを乗せて素晴らしい速さで飛ぶようにぼくたちを運んでくれた。真新しい自転車。そして、その後ろに妹を乗せて走る。ぼくは自分がとてもかっこよくなった気がして、自慢げにペダルを漕ぎ続けた。
ほんの一瞬のことだった。背中から妹が「お兄ちゃん、あそこに猫がいるよ」と指差す方を見た、その一瞬のできごとだ。緩やかな坂道の途中だったが、調子に乗ってスピード
[次のページ]
戻る 編 削 Point(6)