X回目の/への自慰/楠木理沙
 
ふたりでいる孤独とひとりの孤独
前者は後者を凌ぐと誰かが言っていた
ふたつはひとつになれない それを思い知ることになるからだと

隣の部屋から漏れていたふたつの声は 
いつしかソプラノとバスの不協和音に変わった

僕は 不自然な角度で側頭部を壁にこすり付けて目を瞑ると
左手の親指と中指で乳首をつまんで 慌てて露にした下半身に右手を突っ込み 
ただ 闇雲に扱き続けた
時折足先に力を込めて 漏れ出そうとする液体を押し戻しながら

僕は聞いたこともない甲高い声を バイト先の女の子に押し付けた
猫耳にメイドの服で身を包んだ彼女は 僕の上で狂ったように腰を振り続けた
何度も何度も
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