悟/きりえしふみ
 
した 私の身体は
 余りに小さく その足音は余りにも頼りないが故
 此の糸なしには 此の一息 此の一鼓動
 遠くへも また近くへも 運ぶことなど困難なのだ

 指先から垂らす無数の糸 縺れぬように引っ張った
 そして躍らせた 躍らせる
 無数の糸からぶら下がる 幾つもの顔 幾つもの言葉
 そして横顔 無言という文字
 嵩張らぬよう 上手く 並べたりした
 冷笑し迷走へ 歓迎し既知へと
 読者を
 誘い込んだり 誘わなかったりもした

 指先から不可視の(或る者らの目には銀色に映る)糸
 私は幾万もの糸 己の指からぶら下げた
 穴という穴 皮膚という皮膚より 廻らせた
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