◆もぎたての夏/千波 一也
 




呼吸するすべなど誰も教わらない駆け出す夏はどこまでも海


鍵盤を戸惑うような告白が胸をすみかに未来へ渡る


横顔にかける祈りもつかのまに夢から夢へ原理をつなぐ





陽のにおう素肌にけものを思いつつ果実のもろさを丁寧に盛る




もともとの肌と日焼けの境界をきみになぞられ放たれる、夏


あやうげな野性をもって傷ついて吐息のなかにきみの名を呼ぶ


やわらかな髪は刹那の針をもち水気豊かに十二時をさす


太陽はけなげな星とつぶやいて眠れるきみの背中を包む





灯台を頼るほどには熟れていない星に焦がれても
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