いなくなった子供らの話/吉田ぐんじょう
 
穴に飛び込んで

それきり帰りませんでした

それからしばらくして
穴は自然に塞がって

いま
その穴のあった辺りには
小さな夕顔が
笑うみたいに
ぽかっ
と咲いて
夕暮れを背にして揺れている
ということです



水泳の時間のあとに
担任の先生が点呼をとると
一人足りなくなっていました

小さな烏のように
しょぼしょぼと濡れそぼった子供らは
ぱちくりと辺りを見回しましたが
いなくなったのが誰で
どういう顔をしていたのか
不思議なことに
誰も思い出せませんでした

担任の先生も同様でした

皆はぽたぽたと濡れたまま
教室に戻りまし
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