いなくなった子供らの話/吉田ぐんじょう
ました
全員が席につくと
やはりぽっかり空いた机が出来ましたが
そこに座っていた子のことは
やはりどうしても思い出せません
やがてニ学期が始まり
空いた机は倉庫に運ばれました
クラスは一人欠けていても
滞りなく動きました
皆は一人の為に
一人は皆の為に
なんて姿勢のクラスではなかったのです
そして三学期の始まった
ある雪の降る朝のことでした
水泳の時間にいなくなった子供が
出し抜けに戻って
自分の席のあったところに
しょんぼり立ち尽くしていました
海水パンツのままで
まだカルキのにおいをさせて
だけどその頃には
それがあの時いなくなった子供だとは
誰ひとり気付きませんでした
誰だ誰だ
というざわめきの中で
その子もどうやら
自分が誰だか解らなくなったらしく
ずいぶん長い間
首を傾げて
変な顔をしていました
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