いなくなった子供らの話/吉田ぐんじょう
 
生き物の
大きな眼さえ
丸く黄色くぴかぴかと
明滅しているように見えたそうです



少年は穴を掘るのが好きでした
納屋にしまわれていた
錆び付いた平たいシャベルで
すくっすくっ
と柔らかな土を掘るのが好きでした

夏休みに入ってからも
少年は
虫取りや海水浴には行かず
汗まみれになって
相変わらず
すくっすくっ
とやっておりました

十日もすると
穴は黒々と立派に
深く深く地中に沈んで
光の届かない深海のようです

少年は満足げに穴の淵に立ち
それから一度振り返ると
誰かに手を振りました

それから
ひゅっ
と前触れもなく
穴に
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