無伴奏/悠詩
目立ってしまうから
1stホルンのファンファーレは魅力だけど
そんな技術のないわたしは羨むしかなく
1stホルンが音を外しても
あざ笑うなんておとなびた計算はできず
ああわたしの隠れ蓑になってくれていると
背徳的な安堵に溺れて
その瞬間に奇妙な一体感を覚えていた
いてもいなくても
いいわたしは
どっちに転んだって同じだと
みんなの顔色を窺いながら
ただわたしの属する音を
ひとごとのように聴いていたくて
そこにわたしがいることを
掴みたくて
ある日音楽室に
偉い吹奏楽の先生がやってきた
おおきな顔にはげあがった頭
眼鏡の奥の細い目は笑うと
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