無伴奏/悠詩
うと線になる
お化けみたいだけど
とてもやさしい声で歌うように囁くんだ
そのお化けが恐くて
わたしはピアニッシッシモしかでなかった
お化けのレッスンだから
わたしは終始お化けみたいに
身を隠していた
「じゃあ、あと一回通して
うまくいったら終わりましょう」
お化けが囁くと周りからため息が漏れた
それはつまりうまくいかなかったら
終われないわけで
誰かが躓いたら非難ゴーゴーなわけで
わたしは泣きそうになりながら
起死回生の策を思いついた
笑い狂いそうになった
マウスピースを口に当てたまま
頬を膨らませて
吹く真似
吸う真似
歌う真似
休む
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