「用意していたナイフ」−大覚アキラ「水族館」/木葉 揺
 
切り出し、躊躇したのちの最終連である。
独立した「さあ」が、とても不気味に響いている。
また「全部」という言葉に、のちに訪れる爽快感を滲ませているようだ。

この詩を何度も読み返すうち、八連目の効果に気づいた。
この連の役割は思考の中断である。雨の音を聞いた気がしたのだろうか、
ふと自分の取り巻く状況の外のことが頭に侵入したおかげで、回り続ける
思考がふと途切れ、心にゆとりが生まれて本題に入る勇気がわくのである。

この詩が、静かな不気味さを感じさせるのは、一連目と六連目の場面の描写である。
導入部分と中盤に分けて描くことで、読者に雰囲気を伝え、話の進行の途中で
思い出させて
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