「用意していたナイフ」−大覚アキラ「水族館」/木葉 揺
は、話者と「君」との堂々巡りの関係と、もう一つは、
話者の思考である。別れ話を切り出す言葉を選び、タイミングを伺うことを
繰り返す頭の中の様子が感じ取れられる。
そうとも知らずに夢中で水槽に見入っていた「君」は、突如、嫌なもの
を感じ取り、言葉を発してしまう。それが四連目の鰯の回遊に目が回った
かのような「なんか気持ち悪い」である。
この台詞を独立させて、空間で挟んだのも、話者にとって、ひるんでしまう
ほどのインパクトであることを示すためだったのだろう。しかし七連目で
もう一度、鰯の回り続ける姿に、自分の決意に基づく根拠を確認する。
そして「さあ」と、ようやく話を切り
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