手帳に記されていた歌(2)/生田 稔
 
薄ら寒きベンチに座してビールとパンのささやかな昼餉

寒き朝駅に列車を待つときも心引き締め未来をみつむ

立派な書物さえ並んでおればそれだけで書斎は良く見える

駅に向き歩き来たれば傍らに仰木太鼓という像があり

ドングリが一つ転がる目の前で曲がって止まった面白くって

畑作り何か辛気くさくて紙一枚の歌を詠みけり

水面をボートが進む水は怖い青いきれいな水であっても

薄き霞漂いその上にすっくと立てり近江富士

黒髪のゼノビアが好きだという妻55歳にて髪を染めけり

晩秋の月光の曲一人聴き伝道疲れをソフアーに癒す

朝があく水無月の書斎にありて何も思わず

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