実験的感覚的その6/円谷一
僕達までもが停止して心の中まで探られている間に
僕は光の中へ入っていって 頭を支点にして体がゆっくりと反転していくのを感じた 君はもう一曲弾いた瞬間に鍵盤の右手の薬指を支点にして時計回りに体がゆっくりと反転した 部屋の中にある物という物が同時に反転していって 僕の視界の隅に冷めかけのコーヒーが宇宙空間のように零れていくのを見た 気が付いた時にはその現象は収まっていた コーヒーだけが日溜まりの床に広がっていた
雑巾でコーヒーを拭いている間にも君はあの曲の続きを弾いていた 心地良い気分で洗面所に洗いに行って 手を洗って熱いコーヒーをまた注ぎ直した 砂糖とクリームをたっぷり入れてスプーンで掻き
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