実験的感覚的その6/円谷一
掻き回すと(さっきはブラックだった)君がクラビノーバを弾くのを止めて僕に抱き付いてきた 僕はきっと悲しい思いをしたのだと思い マグカップを椅子の上に置いてゆっくりと介抱した 時間は動き出し 12時5分前を指していた 抱擁しながら僕はずっと時計を見ていた 君の背筋と首筋を見て頬と頬をくっつけた 体温を混ぜ合わせて同じにした
「なんで貴方って呼んでくれないくれのかなってね」と僕
「君の方が詩に出てくる人に近づけるでしょう?」と君は泣き顔で言った
時計の針は12時5分を過ぎていた 鳩が5分遅れに出てきて鳴いた
光が消えて僕は 雲が出てきたことを察した
戻る 編 削 Point(1)