詩と詩論(その2)/生田 稔
影
鏡に開く花の象(かたち)
怳(あこが)れてのみ幻の
中に老いたる我身なり
月無き宵を鴨頭草(つきくさ)の
花の上をも仄めかし
秀(はつ)峰(みね)照らす紅の
光の末の白きかな
縋りて泣かむ妹の
萎れ(しお)し花環投げずとも
玉に冠か金光の
せめては墓に輝かば
これら、今まで取り上げてきた3人の詩人は時代も傾向も文体もまったくよく似ている。前にも述べたように、漢詩や俳諧和歌の伝統をあらゆる点で脱してはいない詩人たちである。しかし彼らは当時としては新しかったのではないかと推察するのみである。移行期に現れた秀作として考えてよいのではないか。こう言う
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