木蓮の咲く丘で/蒸発王
上手く受信できない木蓮の花は
ああして
不完全に花びらを広げている
何か大切なものを
守るようで
とても
とても
愛おしい
そして
ベッドのわきにある
大きな引き出しの中を見るように言った
見ると
中には小さな苗木があって
木蓮
と書いてあって
何処かに植えて欲しいと
彼は言った
もしも
そんな未来は厭だけど
もしも君が
50年たっても
恋人も
家族も
だれもいなくて
僕を思い出したら
50年後
その苗木を植えた
満天の夜空の下で
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