蜜色の夢/朽木 裕
もう一度呟いてみる。不健康な黒髪、灰色の瞳を覆う長い長い睫毛。糸が切れた傀儡のように眠り始めた彼は無害で無力で酷く愛くるしい玩具に成る。
「私の白は何処にいったの?返してよ」
本当は知ってた。全部。お気に入りの玩具に飽きて壊したのは私。壊れかけの玩具に牙をむかれて終わりにしたのは私。精神を狂わせて眠りを妨げて私以外見えなくさせて捨てたのは私、だ。
「でもさ、もうちょっと付き合って欲しかったのに」
色々したいことあったんだよ。君がいつも魔法みたいに作ってくれる料理、教えてもらおうと思ってた。君の撮りたいって云ってた写真、君が納得いくまで何も云わずに傍にいようって
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