蜜色の夢/朽木 裕
 
。あたし、よく生きてたもんだ、と我ながら思う。鎖骨のあたりに切っ先を突きつけられて、恐怖で声も出なかった。なんでなんでなんで?こんなに大好きなのに、私達こんなに愛しあっているじゃない?どうしてどうして。分からないよ。ジンかウォッカ飲まされたみたいに、ひりひり焼ける喉。手足がパニックでおかしな動きをしながらも、ただ逃げ惑った。死にたくないあたし死にたくないよ。

 気付けばきらきら綺麗な刃物は私の手に在って、君は二人分の血溜まりのなかで横たわってた。静かに。死んでるの?問う声に答えはノー。私はそれ以来、黒に暴力を浴びせられている。屈する心算も毛頭ないけれど。

 「死ねばいいのに、」


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