停泊する夏/前田ふむふむ
つが、
協奏の円舞のなかで、二枚の呼気を流して、
おまえも随分と歩いてきたが――――、
(わたしも、父さんと同じ瓦礫の臭いを
なぞっているのだろうか。
(わたしは、帽子を蔽うように被って――――、
おまえは、決して散文の顔を見せない。
おまえは、生まれた時から、手は透けていて―――、
(わたしは、自分の躰を抱くことも出来ないのか。
(父さんが、わたしと同じ服を着ている。
眩しくて、顔が良く見えない。
梵字のつま先が、とじた瞼のなかで揺れる。
―――なぜ、九月の高い空に、
わたしは、古い腐刻画が見えたのだろうか。
溢れるほ
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