神話/葉leaf
 


昔、三人の男が互いに足の速さを競っていた。最年長の男はやがて体力が落ちてきて競争から脱落した。だが彼は、健康のためにいつも歩き続けることを自分に課した。凡庸な男はやがて自分の才能に見限りをつけ、競争に意義を見出さなくなった。だが彼は走ることをやめられず、自分のペースで走り続けることを誓った。才能のある男は二人の脱落を気にも留めず、それどころか独自の走法を編み出して恐るべき速度で走れるようになった。彼にとって走ることは何よりも楽しく、生き甲斐になった。三人の男はやがて円周軌道に閉じ込められ、最年長の男は短針に、凡庸な男は長針に、才能のある男は秒針に姿を変えた。こうして時計が生まれた。

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