断想 十二/soft_machine
惨く
しかし痛みなく
どうせなら美しい方法を
思いついた
それはカップの死臭に
微笑みながら唇を触れた
*
昨日釣りそこねた魚が
今どの辺りを泳いでいるのか
もう誰かに釣り上げられてしまったのか
それとも火山島に背を向け腮をひそめ
仄暗く浮かびあがる海嶺まで‥‥
思いを語りに沈んでゆくのか
台所で刺身とバッハが重なって見える
換気扇の中のジェット機は
午後をゆっくりと這って
‥‥茫洋と舞う
ひかりを浴びた塵も私かに
黒髪に降り震えている
たったそれだけのもので
逃れられない生と死の密想に気づく
優しい言葉は諦めたことへの言い訳だろ
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