断想 十二/soft_machine
 
む蟻をする

 *

冷たい風の和音
耳をすまし混ざる銭湯の湯
女に握られた櫂でゆられる気泡をながめ

川岸 電線
あちらとこちら

蝶々 遊々
いきつもどりつ

鏝絵師が虎を
細視し彩帯し

脱獄犯は古里に
再会し最限る

 *

労働が塗るのは空
雲でいっぱいの夢
風の中は
晩酌の肴
鰯のすり潰された
それはきらりきらり
影が砂底に届かなく腐り
生命のスープに溶けてゆく

 *

本当の歌を謡いながら家の鍵を探しても間に合わない
瓦礫の前で積み重なった懐かしさ
酔っぱらいの千鳥足

輝きのみに生活を忘れるならば
幸せの
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