センチメンタルがやってくる/nm6
 
ンチメンタルは、それだ。


クラクラと、ぼくは左右を失う。風邪のように酔えばどこだって行く。巻き返すスピードがすれ違うのはともかく、したたかな立ち姿でぼくにかなうものはいない。ところで空色というのはいわゆる空を募る妄想よりも暗めで、五月ならそれは午後六時に太陽が早過ぎると見送られて眺めるつぎつぎの看板を意味もなく復唱して後押しするセンチメンタル、それだ。そしてぼくらの、車内のひとはいつも通り。満員で潰されてもガラガラで眠っていても朝でも夜でもいつも通りで、いつも通りというのはつまり程度ではなくセクシーさの問題だ。到着は知らなければいい。ぼくにはセンチメンタルがやってくる。


バラン
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