我輩は藁である。 /服部 剛
を
むいた、骨と皮の熱い体を抱き上げて、部屋まで運んでベ
ッドに寝かす。寝たきり爺ちゃんは少し開いた口からかす
れた声で(ありがとぅ・・・ありがとぅ・・・)を繰り返
す。玄関で、そろえた頭を家族に下げた、先輩Aと後輩B、
(おだいじにぃ〜)と声をハモらせ、玄関を閉める。
雨の上がった帰りの道は、なぜかすいすい空いていた。曇
り空の下を走る軽自動車の車内で、後輩Zは花について語っ
た。(紫陽花は、枯れた後も散らないで、老いた姿を人目
にさらす・・・なんだか人間みたいですねぇ・・・)それ
を聞いた先輩Aは(そうか?華麗に咲いて潔く散る、桜の
花も、人生と思うがなぁ・・・)(
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