Perfume/shu
 

「香水よ。これをかけると大人になるの」
初めて酒のにおいを嗅いだときの様に僕は顔を背けた。
彼女は今度はハンカチを取り出して、僕に目隠しをした。
どうやら匂いを頼りにわたしを捕まえてみせろということらしい。
ぼくはまるでピエロのようにおどけて、彼女を追った。
彼女は千鳥の鳴き声を真似して僕を誘う。
ちいちいちい−
「千鳥はね。キツネに襲われると傷ついたふりをするのよ。
ほら。キツネさん。傷ついた私を捕まえてごらん」
彼女の可愛らしい唇が赤く染まり、羽を纏った千鳥になる。
ちいちいちい−

葦原にはいつのまにか花々が咲き乱れ
木々には見渡すかぎりの
[次のページ]
戻る   Point(1)