Perfume/shu
りの桃が生っている。
千鳥は地面に落ちた桃の間を縫うように駆けて行く。
僕ははあはあ喘ぎながら追いかける。
千鳥の声が遠くなっていく。
虚空に手を伸ばし求めるが、なかなか捕まえられない。
気持ちばかりが先走って思わず転んでしまう。
鼻をくんくんさせてあたりの匂いを嗅ぐ。
なにも匂わなくなってしまった。
何も聞こえない。
恐る恐る目隠しをとる。
知らない世界に目を開けるような不安と期待と焦燥。
激しい雨音が頭蓋に押し寄せる。
続いて雷のような轟音。
僕はいつのまにか高層ビルの立ち並ぶ町の交差点に
ぽつんと立っていた。
トラックがクラクションを鳴らしてすれすれに通り過ぎる。
運転手が窓から顔を出して怒鳴る。
「どけっじじいっ!!」
僕の手から腐りかけた桃が落ちる。
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