砂眠/ねなぎ
も無かった
海が広がっているらしい
どこかで
この街で
特に思いいれも友人も居ない
転勤先の
この街で
工場に通うためだけの
この地区で
通勤経路と納品先への道路の封鎖は
未だされておらず
砂が増えた他は
海の匂いが近くなった気がした
磯臭い工業廃棄の匂いが濃くなって
そこから塩分がまとわったら
意識するしかない海
ふと
故郷を思い出していた
山の中の盆地だった
あの頃の田んぼや
畑や
野原
それが
青い臭いが
燃えるように
湿るように
ゴム草履に粘る
泥の乾いた跡のように
痒みを伴って
冷やりとした水滴の
沁み込みや
網の柄の
[次のページ]
戻る 編 削 Point(3)